
<事業内容>
ゆっくりと蘇生する自然を猛スピードで追い抜いて行く人間の大量消費、容易に修理できないものを壊し
続けて見えてきたものは残された資源の尊さです。本来天然資源の乏しい日本が、それを最優先に消費しな
ければならない経済システムを構築、そのつけを未来にまわし、更には次世代に消費されるべき資源をも我
慢できずに使い切ろうとしている始末です。未来の貴重な資源の前借りであるならば返して当然、今はその
返し方を考える最後のチャンスではないかと思います。
このような状況下、地方から大都市へと人やお金が流れ出る、言いかえれば吸い取られてゆく経済の仕組みが
あたりまえのように築かれています。本来豊かな自然を育んできた地方において、その回復を大幅に上回るスピード
でこれを搾取、破壊、得られた利益は外へ持ち出され、傷ついたものの治療にあてがわれることなく一部のこころなき
浪費者のもとへ運ばれるようになりました。グローバリゼーションの名のもと、破壊された自然はお金に姿を変へ大都
市へと向かい、一瞬のうちにその姿を消してしまいます。その結果、人と同じ生命体である地球は、大きくバランスを
崩し始めているのです。
そこで、金利を生みながら何にでも使えるために弊害を巻き起こす円やドルを生命体の静脈流、金利もなく使用目
的を限定できる地域通貨を動脈流と考え、いま一度通貨の持つ本来の役目を問いただしながら、これを生かす事業を
試みることにしました。地方の資源が生んだ利益は地方に還元され、流出した資源(人やお金)がまた戻ってくるような
流れになるように試行錯誤を繰り返して行こうと思います。
◆地域通貨ペパを活用した新聞リサイクル促進システム◆
<対象事例>
現在本システムは、福岡県みやこ町、苅田町、福岡市、及び北九州市小倉南区において運用しており、ここでは
これまでの運用期間が最も長く、広く地域に浸透しているみやこ町の事例を中心にご紹介致します。
※弊社NPO活動の原点である豊津町は、2006年3月20日に近隣2町と合併し「みやこ町」となりました。
<背景>
可燃ゴミの約半分が紙類、その中で最も分別が容易で大量に発生するものが新聞・チラシです。たった一度読
んだだけでまだ新品に近い状態でゴミとなってしまう新聞、分別されずに燃えるゴミとして焼却される新聞の量は排
出される新聞紙全体の約7割を占め、処理に要する自治体行政コストの増加には歯止めのかからない状態です。
例えば、弊社の活動地域である福岡県みやこ町(豊津地区)の燃えるゴミ処理費用は32円/kgで、年間330tの新聞紙
が1千万円超の税金を投じて処理されています。 同地区で流通している新聞・チラシを成木に換算すると約6千本
に相当します。
ちなみに他の活動地域である福岡市の燃えるゴミ処理費用は42円/kg、北九州市では41円/kgと、都市部ほど処理
費用・排出量ともに高くなる傾向にあります。
また、自治体主導のゴミ処理に住民が頼りすぎ、個人の環境意識が低下する現状も否定できません。そこで、コ
ミュニティの構成要素であると同時にゴミの排出者である住民、企業、及び自治体が三位一体となってその処理対
策に取り組む施策の実施が急務となっています。
<目的>
前項に示した背景のもとその調整役をNPOに託し、これまで住民、企業、自治体のみでは解決できなかった
利害関係の問題点を調査、情報を公開、施策を提案、実施することで、円滑な新聞資源のリサイクルを促進します。
そのためには、関係者が平等な立場で積極的に参加できる循環型システムの構築と運営が必要となります。
このシステムを開発、普及、完成させ、税金をはじめとする原資投入の矛先を地域振興に直結する施策へ
と振り向け、資源循環の尊さを根幹とした新たな価値観の創出を通じ、地域の循環型社会形成に寄与でき
る事業を推進することで、公益の増進に努めることを目的とします。
<事業の体制>
本事業は、NPO法人新聞環境システム研究所が主体となり、コミュニティの構成要素である住民、
企業、自治体三者間の利害関係を調整、互いの資源(人・物・金・サービス)を提供し合って経済活動を
活発化させ得る立場で連携を保つ施策です。住民の窓口は弊社のシステムの普及を促して頂くみやこ町各
区の区長、小倉南区葛原本町自治会長等、企業の窓口は地域通貨を受け入れ住民へのサービスを提供して
頂く企業、新聞製品の開発に協力頂く企業、及び自ら新聞を収集して頂く企業と大きく三種類に分かれ、
地域通貨受け入れ企業は地元バス会社の太陽交通(株)、鉄道会社の平成筑豊鉄道(株)、豊津物産直売所
「国府の郷」、新聞製品開発協力企業は福岡を中心に全国各地の企業、新聞収集企業は建築主体の(株)志水
(福岡)等、自治体の窓口は弊社のシステムを受け入れ積極的に協力頂いている福岡県みやこ町の企画部門
をはじめとする各関係部署です。
<事業の内容>
本事業は、大きく分けてリサイクルの@入口部分とA出口部分の施策からなり、互いのバランスを保ち、その流
れを滞らせないような環境作りに努めることに重点を置いています。
@入口部分
新聞リサイクルシステムへの参加希望者は、先ず参加申込み書に必要事項(住所・氏名・性別・誕生年)を記入
後にバーコードを受け取る。このバーコードを新聞束に貼り、所定の場所に排出すれば重量に応じてポイント(1kg
=1ポイント)が加算され、一定量(30ポイント=30ペパ)に達すると地域通貨「30ペパ紙幣」と交換できます。
この地域通貨「30ペパ紙幣」は、太陽交通(株)が運行する路線バスやタクシーの乗車割引券(80円分=30ペパ)、平成
筑豊鉄道(株)が運行する鉄道の乗車回数券(80円分=30ペパ)、及び地元物産直売所の割引券等として使用できます。
福岡市では地下鉄・バス・鉄道カードの割引券(80円分=30ペパ)して使用できます。
ポイントの管理は、現場へ持参するノートパソコン(専用ソフト搭載)とバーコードリーダーにて行います。
新聞束の重量は体重計にて測定します。
本事業は、2002年9月から北九州市小倉南区葛原本町、同年11月から福岡県みやこ町、2004年6月から福岡市、
2005年10月から福岡県苅田町、2006年4月から行橋市にて開始。現在、それぞれ毎月2回の活動を行い、3地域を
を合わせて計850世帯の会員から約10t/月の新聞を収集しています。
会員登録は簡単で無償なため、会員数は徐々に増加しています。また登録に際しては、電話番号やメールアドレス
等の悪用されやすい情報の登録は不要なため安心して参加できます。無駄な経費を抑えるために会員証は発行せ
ず、配布するバーコードを会員証としています。このバーコードもシール式ではなく普通の再生紙で、各自新聞束に
ノリ付けして頂きます。
※現在地域通貨「ペパ」は上記全ての地域で発行、「みやこペパ」、「福岡ペパ」、「北九州ペパ」、3種類が流通して
おり、それぞれの地域にある公共交通機関等の割引サービスに使用できます。
そこで、事業を継続するためのポイントですが、みやこ町においては同自治体が弊社NPOを地域の子供会等と同
等に新聞回収助成事業の対象団体とみなし、毎月の新聞収集データを申告することで新聞1kgに対し5円の助成金
を頂いています。 地域通貨「30ペパ紙幣」1枚は新聞30kgとの交換ですから、これを申告すれば自治体から150円
(5円/kg×30kg)が頂けるわけです。また、地域通貨「30ペパ紙幣」1枚は、例えば地元太陽交通(株)が運営する路線
バスの80円分の乗車割引券に使え、NPOはこのバス会社から同額の80円にてこれを買い取りますからバス会社の
金銭的な負担はありません。
結果として新聞30kgを分別持参頂いた住民はNPOに150円の収入をもたらし、このうちの半分超である80円を住民
に還元することになります。これは環境意識の高い住民に対して、NPOを迂回した税金の還流を意味します。
この点では、税の使用の不公平も是正されます。同時に、自治体としては燃えるゴミとしての焼却費用(みやこ町の
場合32円/kg)を84%と大幅に削減できます。言い換えれば、住民はマイクロビジネスに参加しながら税金使用の抑
制に協力していることになります。
一方、NPOは残りの70円(30kgの場合)を事業運営費にあてており、事業の浸透・拡大にともない黒字化する目処も
つきました。
A出口部分
本システムの普及動向を大きく左右するのが収集された新聞資源の行き先です。従来通りの再生紙の生産は、
その再生コストに比べて製品の付加価値が低く市場も小さいため、新聞資源リサイクルの出口としては有望視でき
ません。そこで、紙本来の特性を重視し、「紙をもとの木へもどそう」のスローガンのもと、市場規模の大きい住宅
業界、生活用品向け新聞製品の生産に的を絞りました。これらの製品の開発に際しては、国内の各企業の協力を
得ることができました。既存製品に比べ環境負荷を大幅に抑えた新聞製品のサンプルも完成し、付加価値を上げる
ための応用製品も発表しました。これから、新聞資源の特性を活かした製品をどんどん発表してゆきます。
今後は、、マーケティングも兼ねて消費市場の反応を調査する必要があります。受け入れ市場の規模が確認でき
れば、新聞製品の生産工場も計画できます。一方で、新聞資源量のバーコードデータによる物流管理によって安
定した原料の供給が可能になれば、リスクを極力抑えた生産計画も立てられます。地域内から安い原料を供給で
きれば大幅なコスト削減が図れ、製品の価格競争力も高まります。製品コストの2割近くを占める運送費を削減す
るためには、更に消費地に近いことが理想ですが、この点は交通アクセスを加味してバランスのとれた地域を想定
します。新聞リサイクルに積極的に取り組む地元の利益を最優先するため、雇用の創出や地元ブランドの確立に
寄与できる形態を取ります。想定する生産工場は、周辺環境に適応し、水を汚さず、機械化は必要最小限に止めた
人が参加できる工場(こうば)です。人が参加することで初期投資を極力抑え、規模は小さくても継続できることが重
要であると考えます。
以上@、Aの施策の実施を通じて培ったノウハウや情報は、ホームページや講演を通じて社会へ伝えるよう努め
ています。マスコミが取り上げて紹介して頂く場合もあります。地域に密着して事業を継続させる上で最も大切なこと
は、情報公開と利益の分配だと考えます。新聞資源のリサイクルと同じで、一ヶ所に情報や利益が集まり滞っては
健全な活動が阻害されます。
<事業の効果>
(1)地域環境改善に係る効果
これまで燃えるゴミとして捨てられ、高い税金をかけて焼却されていた新聞が新聞製品の原料となればその地域が
資源供給地となり、新聞製品生産の増加=新聞焼却費用の減少という好循環が生じることとなります。例えばみやこ
町の環境改善効果は以下の通りです。
【みやこ町(豊津地区)において新聞リサイクルが徹底された場合の環境改善効果】
新聞の年間流通量470tの7割330tが32円/kgのコストをかけて焼却処分されており、その年間行政コストは、
1,056万円に達します。
→ 本事業により新聞リサイクルが完全に機能すれば、年間1,056万円の税金が節約可能。
※ ただし、厳密にはNPOへの助成金支払い5円/kgが発生するため、差引き891万円の節約となります。
新聞1kgについて考えると、従来の焼却処分(32円/kg)をNPO経由(5円/kg)でリサイクルに振り向けることで、
84%(=1-5/32) の行政コスト削減となります。
(2)地域の活性化に係る効果
対象を身近で目に付く(かさばる)新聞紙に絞り、地域通貨を利用したリサイクルを推進することで、これまで安易
にゴミとして処分していた新聞を、まだ価値のある資源として見直すきっかけ作りになっています。みやこ町において
は、町報やコミュニティラジオ等で告知して頂いていますが、最近は口コミによる紹介で新たな参加者が増えています。
新聞集荷場までの交通手段のほとんどが自動車のせいか、遠方の方ほどまとめて大量の新聞を持ち込まれる場
合が多く、新聞束が重くて持参できない近所の老人や交通手段のない隣人の方々の新聞も預かって持ち込まれてい
ます。
集荷場所を当初の同町役場前に加え、多くの人々が集まるみやこ町中央図書館、豊津物産直売所「国府の郷」、
及び町内2ヶ所の郵便局にも設けたところ、読書、買い物、ATMの利用ついでに新聞を持参される方が増え、参加
者の利便性が増しました。そして、活動を一気に浸透させたのは豊津シルバー人材センターの協力でした。
会員の勧誘から新聞収集、運搬に至るまで、シルバー人材センターが参加して以降町が活気づいてきました。
今後、この活動がシルバー人材センターの雇用拡大につながってゆくものと確信しています。
また、この施策を始めて以外だったことは近隣の自治体及び住民の反響です。時折、集荷場を訪れる近隣自治体
の住民の方から参加希望があり、この自治体の枠を越えた活動の普及方法を検討してきました。
その結果、2005年10月22日より苅田町で、2006年4月22日より行橋市でも活動を開始することになりました。
ところで、本施策によって大きく変わり始めたのが住民の新聞に対する意識と自治体の首長をはじめ職員の方々
のNPOへの積極的な協力です。施策の実施によって得られた情報は常に公開し、地域全体の環境意識向上に役立
てたいと思っています。このノウハウは、地域の学校及び企業での環境教育に役立てられるよう教育委員会へも提言
しています。豊津地区では2004年に、福岡県が3校を指定した中高一貫校のうちの一つが開設されました。
NPOが環境教育の新たな試みを提供できればと考えています。
(3)事業性の向上に係る効果
本事業は、自治体の広域合併の流れに乗り近隣自治体へと拡大して行く可能性が非常に高く、広域合併後のエリ
アを視野に入れた動きをしています。ただ、軸足を一ヶ所に置くのではなく小さなセルの集合体からなるしっかりとした
ネットワークを構築する計画です。現状の会員管理はとてもシンプルなため、会員数や活動エリアがある程度増えた
場合でも、一時的な拡大投資コストは必要となりますが管理コストはそれほど変わらない体制を維持できます。したが
って、会員数の増加や活動エリアの拡大によってある程度の新聞資源が収集できるようになれば、運用効率が上がり
黒字化が図れます。現在の助成金に加え企業スポンサーからの寄付や新聞製品の販売収入による収益確保も期待
できます。将来的に収益が増加すれば、先ずシステムの完成度を高める投資を通じて地域への還元を充実させます。
具体的には、現在地域通貨「30ペパ紙幣」1枚が太陽交通(株)バスの乗車補助券80円分となっていますが、例えばこ
れを100円にします。この方法として、NPOが全額負担する方法、太陽交通(株)が差額の20円分を負担し直接住民へ
還元する方法等様々な方法が考えられます。本施策にてバスの集客力が増せば、同社においては公共事業を営む
企業として十分検討に値する地域貢献です。そして、NPOは以上のような事業性の向上に努めるとともに、本来の事
業の柱である新聞リサイクル促進システムの発展と普及に徹します。
地域の住民に支持され社会的に不可欠な事業であれば、社会から生かされ、育てられながら存続できるはずです。
<これから>
現在の社会システムは、地球という資源を浪費しながら成長しています。技術の発展はこの浪費のスピードを加速
させ、未来に残すべき資源をも現在に飲み込もうとしているようです。
この時代において、私達ができることは小さなことです。でも始めてみないと分からないことがほとんどです。
そこで、これまで周りの方々に支えられながら見えてきたこと、これから示すべきことをお伝え致します。
私達が取り組んでいる「新聞リサイクル促進システム」の普及において、必然的に地域通貨ペパは生まれました。
しかし、この地域通貨ペパは、新聞リサイクルの促進という明確な目的を持った本システムを円滑に運営するための
道具の一つです。他の様々な道具との役割を棲み分けることで、その能力を引き出すことが可能となります。
本事業の特徴を一言で言えば、「新聞のリサイクルを通じて個人を評価、行政コストを削減、公共交通や物産所の
利用を促進することで地域経済を活性化、総じて環境保全に寄与できる事業」となります。
ここでの環境保全は、新聞の焼却を抑制してCO2を削減、新聞を原料とした木質代替え製品を普及させ、森林伐採
を抑制してCO2を削減するといった二つの側面に加え、自動車からバスや鉄道等エネルギー効率のよい公共交通へ
の移行を促すことで、住民・自治体・企業が手を取り合って温暖化防止活動に参加できるということです。
地域通貨ペパの役目は、このシステムを社会に分かりやすく伝えるための翻訳機のようなものです。
これからの事業運営を進めてゆく上で、様々な観点から沢山のご意見を拝聴させて頂きたいと思っております。
水や空気のように誰もが違和感なく享受でき、こころおきなく満足して頂けるシステムに育てて行く所存です。
今後ともご理解、ご支援のほどよろしくお願い申し上げます。
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